歯周病とは?

歯周病とは?

歯周病とは、歯の根元などに付いたプラーク(歯垢)や歯石に潜む歯周病菌が毒素を出し、歯肉に炎症を起こし、徐々に歯を支える骨を溶かしていく病気で、かつては歯槽膿漏とも言われていました。

歯周病は初期の段階では、痛みなどの自覚症状があまりないことから“沈黙の病気”とも呼ばれ、“歯肉から出血がある”“歯がぐらぐらする”などの症状に気づいたときには重症化していることがよくあります。日本人では35歳以上の人の80%以上がかかっていると言われ、歯を失う原因の第1位となっています。

本当は怖い“歯周病”という病気

あまり知られていませんが、歯周病が進行して細菌が増殖すると、歯肉の血管から細菌が侵入して全身にさまざまな悪影響を及ぼします。歯周病に関連する疾患として下記のものがあります。

糖尿病との関連

重度の歯周病の場合、軽度の人にくらべ、2年後に糖尿病が悪化している率が5倍高くなります。

心臓病との関連

歯周病菌の作り出す物質が血液中に流れ、冠状動脈の壁を肥厚させ、血管がつまり動脈硬化を起こすのではないかと考えられており、心筋梗塞や狭心症を引き起こす原因となります。
ノースカロライナ大学の調査によれば、心臓疾患にかかって致命的な心臓発作を引き起こす確率は、歯周病患者の方が歯ぐきの健康な人に比べて約3倍も高いことがわかっています。

早産・低体重児出産との関連

歯周病の母親では早産が多く、低体重児出産の確率が健常者の約7 といった衝撃的な数字がアメリカで報告されています。他にも“肺炎”脳卒中“などの関連が指摘されています。
歯周病の早期発見・早期治療は、歯やお口の健康を維持するだけでなく、全身へのさまざまな悪影響の予防につながるのです。当院では歯科医師、歯科衛生士がチームとなってしっかりと検査・治療をさせていただきます。
そして治療後は定期健診を通して患者さまのお口の健康を守っていきたいと考えています。

歯周病の原因について

歯周病の原因として考えられるものはいくつかありますが、直接的な原因としてはプラーク(歯垢)が考えられます。プラークの中には約300~400種類の細菌が存在し、そのうちの数種類が歯周病の原因菌となります。歯磨きが不十分で磨き残しがあると、歯周病菌も残ったままになり歯周病になってしまいます。当院では位相差顕微鏡や各種試薬で歯周病菌検査を行っております。

その他、歯周病を悪化させる間接的な原因としては下記のものがあげられます。

  • 糖尿病、高血圧、ホルモン異常などの全身疾患
  • 歯ぎしりや食いしばり
  • 喫煙
  • ストレスや不規則な生活
  • 多量の飲酒、不規則な食生活
  • 不適合な修復物、噛み合わせの不良
  • 薬剤の副作用

歯周病の症状や前兆

下記のような症状がある場合、歯周病の可能性があります。

  • 歯磨き時に出血する
  • 歯肉がむずがゆい、痛い
  • 歯肉が腫れている
  • 朝起きた時、口の中がネバネバする
  • かたいものが噛みにくい
  • 歯が長くなったような気がする
  • 前歯が出っ歯になった
  • 歯と歯の間に隙間ができてきた

このような症状がある場合、早めに歯科医院を受診しましょう。

自宅でできる歯周病予防

口腔ケアグッズ

歯周病にならないためには、歯周病菌が増殖しやすい歯周ポケットを日々ケアすることが大切です。
特に初期の歯周病は正しい歯磨きで改善することもあります。当院では正しい歯磨き指導を行っています。
また、ご自身に合った歯ブラシ・デンタルフロス・歯間ブラシを使用することも大切です。当院では電動歯ブラシや音波歯ブラシの使用をおすすめしています。特に手先の力が弱くなったご高齢の方にはおすすめです。
歯ブラシは柔らかめか普通のものを選びましょう。硬めのものは歯肉を傷つけることになるのでおすすめしていません。 歯ブラシ選びなど、当院ではアドバイスしておりますので、お気軽にご相談ください。

歯科医院でする歯周病予防

毎日の丁寧な歯磨きに加えて、歯科医院で定期的に歯石除去などを行うことで歯周病を予防できます。
当院では、歯周病予防のために、患者さまがご自分で磨けない部分や、磨き残しの歯垢やバイオフィルム、歯石を歯科医師・歯科衛生士が専用の器具や薬剤を用いて機械的に清掃するPMTC(プロフェッショナルトゥースクリーニング)を行っています。
3~4ヶ月に1回、定期検診を受け、PMTCを行うことをおすすめします。

歯周病治療の流れ

当院では歯周病の治療を下図のような流れで行っており、歯科医師・歯科衛生士がチームとなって、患者さまの歯をできるだけ長く守ることを目指して治療に取り組んでおります。

  • 1応急処置

    歯ぐきの痛み、腫れなどの急性症状に対処します。

  • 2精密検査

    いったん痛みや腫れが治まった後、歯肉の状況を詳しく調べます。
    レントゲン検査やお口の中の写真撮影も含まれます。

  • 3治療計画とカウンセリング

    精密検査の結果をもとに、個々の患者さまについて綿密な治療計画が立てられます。
    それにそって、患者さまに治療計画の説明が行われます。

  • 4初期治療

    歯周病治療の基本となるもので、歯の磨き方の改善、歯石除去などが行われます。
    簡単な虫歯の治療や、仮ブリッジ、仮義歯の作製も必要に応じて行われます。

  • 5二次治療

    歯周病の進んだ部位のみに行われます。
    失われた歯周組織を再生させる、再生療法もこの時期に行われます。
    又、インプラントが必要な方には、この時期に行います。

  • 6修復治療

    被せ物の処置、ブリッジ、入れ歯(義歯)が作製されます。(必要な方のみ)

  • 7メンテナンス

    良くなった歯ぐきを長持ちさせるため、3~6ヶ月ごとの定期検診を受けましょう。

歯周組織再生療法(エムドゲイン)とは?

歯周病治療の目的は病気の進行を止め、健全な状態に歯周組織を回復させることです。 軽度の歯周病であれば、歯や歯の周りを清掃することで治すことができます。
しかし、炎症が歯肉の奥深くまで進行し、歯周組織の破壊がひどい場合には、歯周組織を回復させるための手術が必要となります。この手術の際に、歯周組織再生誘導材料という手術治療を補助するための材料が使用されることがあります。
現在使用される歯周組織再生誘導材料で、安全に配慮され治療効果があるものがエムドゲインゲルという材料です。 エムドゲインゲルはスウェーデンのビオラ社で開発された材料で、主成分のエナメルマトリックスデリバディブは、歯が生えてくる時期に重要な働きをするタンパク質です。
現在の科学水準に基づく安全性の確保のもと精製され、2002年に厚生労働省より認可されています。
手術の際に手術部位にエムドゲインゲルを塗布することにより、歯の発生過程に似た環境を再現します。 このように、初めて歯が生えた時と同じような強固な付着機能をもつ歯周組織の再生を促すのです。

エムドゲイン手術の流れ

エムドゲイン手術の前に

歯周組織の状態を調べるために歯周ポケットの深さを計ったり、レントゲンを撮ったり、その他治療に必要な検査を行います。 エムドゲインを使った治療が行えるかどうかは、歯周病の程度や患者さまの健康状態によっても異なります。

歯周外科手術とエムドゲインの塗布

手術は麻酔をかけて行うため、痛みはありません。

  • 1切開・剥離

    治療する部分の歯肉を切開し剥離します。

  • 2塗布

    歯根表面の清掃を行い、エムドゲインゲルを塗布します。

  • 3縫合

    切開した歯肉部分を縫合し、手術は終了です。

手術にかかる時間はおよそ1時間前後で、手術後は帰宅できます。
抜糸は手術日から2週間後を目安に行います。